pod hd pro x front

過去15年間の間にライブ活動やレコーディングを行ったことがあるギタリストであれば、恐らくLine 6のPOD関連の製品を少なくとも目にかける機会はあったのではないかと思います。何百という音色が詰められた初代豆型のPODは、当時DTMの世界に革命を起こしました。

そしてLine 6は最新のPODのバージョンとして、Xシリーズを発表しました。これは、フラッグシップモデルのPOD HD Proと、 POD HD500のアップグレード版となっています。

Xがついて何が変わった?

このHD Pro Xは、前モデルのHD Proと同じアンプモデルとアルゴリズムでできているのですが、DSPのプロセシングパワーが増えているようです。
そのため、デュアルアンプや、リバーブやピッチシフターなどの処理に負担のかかる要素を以前より多く使ってより自由な音作りができるようになっています。
これだけDSPパワーがあれば、Steve Vaiのハーモナイザーがレイヤーされているような複雑な音さえも、もはやシンプルに感じてきます。

万能的なアンプセレクションと、豊富なエフェクト

定番のアンプモデルはもちろん抑えつつ、今回はFender Blackface Deluxe Reverbや、Marshall JTM-45 MkII等の意外なセレクションも用意されています。POD XTに比べるとアンプモデルの数はかなり減っていますが、一つ一つのクオリティは数倍上がっているように感じます。

エフェクトに関しては、48秒間ルーパーをふくめ、Line 6のMシリーズから100種類以上も用意されています。
同時に8つまでエフェクトを使うことができます。アンプとエフェクトのリストは、Line 6のオフィシャルサイトで確認できます。

接続性に関しては、PODシリーズの中で一番高く、どんなシチュエーションにも対応できるだけの入出力端子が揃っています。

pod hd pro x rear

ラック式機材に対する恐怖

ラック式の機材を使ったことがないギタリストは、ラックに対して変な恐怖心のようなものを抱いていたりすることがあります。私も昔はそうでした。
謎のツマミがたくさんある割に、ディスプレイ画面が小さくてどう操ればいいのかわからない、とどう操ればいいのか疑問だらけでした。

でもPOD HDのラックは、フロアタイプのものとコントロールが全く同じなので安心です。
POD HD Pro Xは、これまで私が使ってきたエフェクターに比べると格段に使い方が分かりやすいのですが、それでもあの画面の大きさに一度に詰め込める量には限りがあります。

ここでPODの便利な点は、アンプモデルに対するコントロール(Drive、Volume、Master、Bass、Mid、Treble)はディスプレイの横に配置されているツマミで、画面に表示されている内容に関係なく、どのタイミングでも弄ることができるというところです。
でもそれ以上に深いレベルの調整は、ディスプレイのメニューを見ながらコントロールしなければなりません。

display

ディスプレイのデフォルトの画面にはシグナルチェーンが表示され、その中でアンプやエフェクトがそれぞれブロックとして表示されます。
画面のすぐ右の十字架ボタンで、編集したいブロックを選択でき、画面の下に並ぶ四つのツマミで、画面のに表示されるパラメータを調整することができます。
このようにPOD HD Pro Xで音作りをすることは、まぁ文句を言うほど大変ではありませんが、正直、画面を切り替えたりして目的のパラメータを探すのは少し面倒だと感じます。

そこで非常に役立つのが、無料でダウンロードできるEditソフトウェアです。
POD HD Pro XをUSBでパソコンに接続してEditソフトウェアを起動すると、PODで音をリアルタイムで確認しながら音作りをパソコン上ですることが可能になります。
これを使うと、音作りが数倍楽で楽しくなります。なんたって、アンプやエフェクトを選んでドラッグアンドドロップ法式で配置していくだけの操作ですから。
実際試してみると、実物でやるよりも遥かに効率がいいということが実感できるはずです。

これをPODじゃなくて実物のコンパクトエフェクターで同じことをやろうもんならケーブルを抜いたり刺したりでめちゃくちゃ手間のかかる作業になりますね。デュアルトーンなんてことまで実物で再現しようとすると飛んでもない金額と物理的スペースが必要になりますし。そう考えると、PODとEditソフトウェアの威力に改めて感心してしまいます。

hd edit software

Editソフトに関して唯一気に入らないのは、パラメータの値を数値入力できないというところです。例えばディレイを正確なタイミングに設定するのに、ノートパソコンのタッチパッドを使って画面上のツマミを回すだけだと、微調整が結構大変です。
でもご安心ください、キーボードの上下キーは使える仕様なのでそれを使って微調整をすることができます。

POD HD Pro Xにはプリセット用にたっぷりとメモリが用意されていて、全部で512のパッチを保存することができます。それらは64個づつで8グループに割れられているので、複数のプロジェクトで使い分けるのに便利です。

あと一つ注意すべきなのは、ラック式にはエクスプレッションペダルがついていないということです。なので別売りのフロアコントローラを購入しないと、ワウやボリュームペダルを使った音が使えないということになります。場所をとらなそうという理由でPOD HD500XではなくHD Pro Xを買ったとしても、コントローラーと、あとラックケースに入れたりしたら、最終的にはHD500Xの方が省スペースになります。

プレイヤーが気持ちよく弾ける

最近では、リアルなアンプモデラーが結構増えてきて、メーカー同士の競争は、音だけでなく、プレイヤーにとっていかにリアルなフィールであるかという次元になっています。これに関してPOD HD Pro Xではsag hum bias bias Xというチューブのリアクション等の超微調整パラメータの力もあり、かなりリアルなフィールを実現しています。
他のメーカーの製品では、サウンドクリップを聴いて「良いな」と思っても実際に弾いてみると凄く弾きづらかったなんていうこともあります。その点POD HDは非常に弾き手にとってやさしくワクワクさせてくれる機材となっています。

総評

平均的なギタリストにとって、POD HD Pro Xよりも便利な機材はそうないでしょう。
宅録でいい音を録るのも、通常のアンプをマイキングしようとしても近所迷惑になるので十分な音量が出せず、防音室がないと難しいです。
それに、その後につなぐ高価なコンプレッサーやEQも揃えるのは非常に難しいです。
それに、素人が頑張って機材を揃えたところで、POD HD Pro Xの音に勝る音を作るのはなかなか考え難いことです。

相場として6万前後。競合の機種にはそれより遥かに高いものもありますが、POD HD Pro X単体で自分のリグとしても、エフェクターとして部分的に使ったとしても、非常にイイ働きをしてくれる優秀な機材であることは間違いありません。

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