フェージングとは

二つのキャビの組み合わせたときに、高音がグッと下がったり、貝殻に耳を当てているようなフェーザーっぽい音になることがあります。
これは、コームフィルターという現象のフェージングの問題です。

一つの音源を二つのマイクで別々の距離から録音をしたときに起こる現象で、一定のタイミングの差による波形の引き算が発生し、一部の音域が削られてしまったり、時には完全に消えてしまうことさえあります。
特に高域は波長が短いためコームフィルターの被害に合いやすく、二つの音源のうち片方がほんの少し遅れただけでかなりの音域が消えてしまいます。聞こえ方としては、アンプの上に掛け布団がかけられたような感じになります。

デュアルキャビのアプローチでは、二つのキャビから高域担当と低域担当に分けて音を鳴らしていますが、二つのキャビが完全に担当音域が分かれているというわけではなく、チャンネルBの方からもちゃんと高域はでています。それがチャンネルAの高域と重なって消え去ってしまうのです。マイクは同じものを使っていても、別々のキャビモデルを使うだけでこのような現象が起きることがあります。
その原因として考えられるのは、Line6がキャビをモデリングしたときのマイクの配置の距離によるものか、DSPの処理速度の差のどちらかです。

解決策

このフェージング問題を解決する方法があります。その方法とは、片方のチャンネルにEQかコンプレッサーを配置することにより、そのDSP処理負担による若干のレーテンシーが発生すること利用して、二つのチャンネルのフェーズを合わせるのです。正しく設定すれば音のクオリティは雲泥に差がでるので是非試してみてほしいです。

(ここから先に書くことは結構テクニカルになってきます。)

一番シンプルなやり方としては、片方のチャンネルにフラットな設定のParametric EQを配置してonとoffを切り替えてみてonのときに音が改善されるかを聞き比べます。もしよくならなければ、次はチャンネルBで同じことを試します。

それでも篭った音のままであれば、二つ以上のエフェクトを追加する必要があるので、正直そのキャビの組み合わせを諦めたほうが早いです。

この件を物凄く細かくリサーチをした表が海外の掲示板に公開されていましたので、これを参考にキャビの組み合わせを選択しましょう。

こちらのPDFを見てください。
≫デュアルキャビPDFを開く

デュアルキャビPDFの使い方

dual cab pdf
このPDFの使い方を説明します。

まず、1~7ページの表の中から、使いたいキャビの組み合わせが載っている表を探します。
チャンネルAのキャビ/マイクはX軸、チャンネルBの分はY軸に書いてあります。
自分が使いたい組み合わせの表を見つけたら、その表の中の使用するマイクをチャンネルAとBで見て、
その二つの列が重なるセルに数字が書かれているので、その数字をメモします。
その数字が、フェージングを解消させるために、チャンネルBを遅らせる必要があるサンプル数です。
数字がマイナスの場合は、チャンネルAを遅らせる必要があるという意味になります。

その数字を把握したら、その分のディレイを発生させてくれるエフェクトを、そのチャンネルに配置します。
PDFの10ページ目を見ると、各エフェクトが発生させる遅れのサンプル数が載っています。
「Delay Time in Samples」という列がそれに値します。
エフェクトが発生させる一番短いディレイは6サンプル分だということがわかります。

なので、もし6サンプル以下のディレイが必要なときは、それ以上大きいディレイが発生するエフェクトをもう片方のチャンネルに追加して足し引きをします。
たとえば、チャンネルBに4サンプルの遅れが必要だとしたら、チャンネルAにParametricEQをチャンネルAに配置し、チャンネルBにBlueCompを配置します。そうするとAチャンネルが6サンプル遅れて、Bチャンネルが10サンプル遅れるので結果としてチャンネルBに4サンプルの遅れを作り出すことができます。

PDFの11ページ目を見ると、1から20以上までのディレイサンプル数を作り出すのために適したエフェクトの組み合わせが一覧されているので、自分で計算しなくても大丈夫です。

1~7ページの表で、数字の背景に色がついているセルは、フェージング問題がなくエフェクトを追加する必要がない組み合わせと、少しだけエフェクトを追加すればいい組み合わせを示しています。
これらを使用するのが一番オススメです。
でなければ、フェージング解消のためにエフェクトとたくさん追加することになり、その分、音作りに使えるエフェクトのスロットとDSPのパワーも減りますので、それなら最初からフェージングがないか少ないキャビの組み合わせを選んだほうが断然いいです。

また、このようにフェージングを解消するために配置したEQを、フラットのままにせず、普通にEQとして使用してもレーテンシーのサンプル数は変わらないので、使えるときは使っちゃって問題ありません。

さて、フェージングを解消させたところで、まだ音作りは終わってません。
ここまでは、あくまでフルレンジのサウンドを作るための作業で、たぶんそのままだと高音が強く感じるかもしれませんが、この後にEQのステップに入りますのでご安心ください。

ここの時点では、
①欠けている音域がないことと、
②一つのアンプとして聞こえること
の2点を満たしていることを確認してください。

次回はEQの仕方について書いていきます。

自分で音作りをするのが面倒になったら、POD HD Manのパッチセットをお試しください。