ギタートーンのEQについて
多くのギタリストは自分のトーンのEQを具体的な周波数で考えることができていないとおもいます。
それは恐らく、ほとんどのアンプがBASS、MID、TREBLE、PRESENCEという大雑把なツマミが搭載されているだけだからではないでしょうか。
もちろん、これらのツマミは大体のイメージを近づけるためには役立ちます。ですが、ある特定のサウンドを精度高く作りたい時は、そのシンプルなつまみだけで完結できることは滅多にないでしょう。時にはツマミの間の一部分だけの周波数を調整したいときもあるでしょうし、時にはツマミが担っている範囲以上の広いレンジを調整したいということもあるはずです。
更に、これらのコントロールがそれぞれ担っている範囲というのが、各アンプでバラバラなので、一つ一つのアンプをいじり倒してその特徴やニュアンスを覚えざるを得ないのです。
また、これらのコントロールはただEQを調整するだけではなく、パワーアンプによるコンプレションやディストーションの効き方にも変化を与えます。つまり、すべてのツマミを50%にするのと、100%にするので結果が変わってくるということです。
もちろん、これらのツマミを使わないというわけではありません。ですが、これだけに頼ることはほぼありません。
ギタリストが本来把握しておかなければならない周波数スペクトラムは、単なるBASS、MID、TREBLE、PRESENCEじゃなくて、このようなものです。
周波数(Hz) | 強調したときの聞こえ方 | 削ったときの聞こえ方 |
---|---|---|
0~150 | モコモコ | 薄っぺらい |
150~250 | ボヤボヤ | 薄っぺらい |
250~500 | クリーミー | 無機質 |
500~800 | フラット | スカスカ |
800~1500 | ジェント | ビリビリ |
1500~3000 | パキパキ | 活気がない |
3000以上 | チリチリ | スムーズ |
POD HDのEQエフェクトについて
私は主にParametric EQとMid Focus EQを使っています。その次によく使うのが、Studio eqと graphic eq です。
4 band eqの役割はよくわかりませんが、なんとなくアンプのbass middle treble presenceのツマミと同じような効果があるようです。
POD HDでは、本来dbやHZなどで表記されるべき数値の大半が%で表記されています。
POD HDのEQモデルについての公式な情報があまりに少ないので海外のコアなユーザー達がさまざまな研究をして結果を公開しているのでご紹介します。彼らのおかげで、EQのFreqの%が具体的に何HZのことを指しているのかはっきり把握することができます。
下の表と図を見ていけば解りますが、POD HDのEQでは高域の周波数の細かい調整はできないようです。 高域をまとめてカットしたりブーストしたりすることはできますが、ごく一部の周波数だけを下げたり上げたりできるEQはありません。 Parametric EQのHighは1.5kHZから始まるシェルフEQになっています。Frequencyを100%にしても4.7kHZくらいまでしかあがりません。
Studio EQは高域として、3kHZと5kHZと8kHZの設定がありますが、調整可能なQがありません。
Mid-Focus EQのロー・パスは20kHZくらいまで伸びてはいますが、下のグラフの通り周波数コントロールに非常に敏感になっています。また、カットすることはできますがブーストすることはできません。
このようにEQだけでは高域の自由度が低いので、精度の高い高域の微調整をするためにはアンプモデルのPresenceとTrebleのツマミと、キャビとマイクの選択と、CabDEPを組み合わせて調整を重ねる必要があるでしょう。
Graphic EQ
このEQが最も解りやすいモデルだと言えます。
しっかりとHZで明記された固定の周波数レンジのゲインをそれぞれ調整する仕組みになっています。一つ注意が必要なのは、このEQはデフォルトの状態でもニュートラルではないということです。すべて0%に設定していても、若干高域がブーストされる傾向があります。
このEQはプリEQするときに使っています。
高めの中域と低めの中域のバランスを調整しすく、パンチがありつつも抜けの良いサウンドを作るための鍵となっています。
このEQをアンプモデルの前に配置して、アンプの後には更にもう一つEQを付けて音を仕上げるのですが、そこはGraphicEQだと中域よりも高いエリアはあまり細かい調整ができないので、ほとんどの場合は別のEQモデルを使用します。
Parametric EQ
もしかしたらPOD HDの中で最も秀逸なエフェクトは、このParametric EQかもしれません。
ただ非常に残念なのは、すべての数値が%表記になっているので、具体的にどの周波数を弄っているのかが視覚的にわからないのです。
なのでこの表を見ながら弄らないといけません。
Parametric EQ %→HZコンバージョン
% | HZ(Freq) |
---|---|
0% | 50 |
5% | 75 |
10% | 105 |
15% | 135 |
20% | 175 |
25% | 220 |
30% | 315 |
35% | 395 |
40% | 540 |
45% | 700 |
50% | 880 |
55% | 1150 |
60% | 1400 |
65% | 1670 |
70% | 2000 |
75% | 2300 |
80% | 2750 |
85% | 3150 |
90% | 3600 |
95% | 4000 |
100% | 4500 |
私はほとんどのパッチで1~3個のParametric EQを使用しています。このEQが唯一特定の周波数を指定してそれをブーストしたりカットしたりできるという点が決め手です。 そのため、シグナル全体を明るくも暗くも調整できますし、またもっこりしたりジリジリしてしまっている細かい領域のみをピンポイントして削るためにも使えます。
Parametric EQの各パラメータがどのような周波数レンジに影響を与えるのかがこのグラフを見ればわかります。
Studio EQ
Studio EQは個人的なお気に入りのEQの一つです。
このEQでは4~6オクターブという広いQで周波数を選び、ゲインをコントロールできる仕組みになっています。
このEQの最大の利点は、一つのEQで2バンドあるので、ブーストやカットをしたいところが2か所あったらそれを一つのEQで済ませてDSPの節約になるというところです。
Studio EQ %→HZコンバージョン
% | High Pass HZ(Freq) | Low Pass HZ (Freq) |
---|---|---|
0% | 0 | 500 |
10% | 65 | 600 |
20% | 110 | 800 |
30% | 205 | 1200 |
40% | 250 | 1500 |
50% | 250 | 2000 |
60% | 325 | 3500 |
70% | 400 | 6000 |
80% | 450 | 8500 |
90% | 500 | 12000 |
100% | 525 | 18000 |
4 Band Shift EQ
個人的にこのEQを使うことはめったにありません。
4つのバンドがあり、それぞれが既に指定されたレンジのピークとディップのレベルをdb単位で調整ができます。
Shiftのツマミを0から100にするにつれて、lowとlow midのレンジが低めの位置に移動し、high midとhighのレンジが高めの位置に移動するという謎の機能があります。
このEQを使うために考えられる用途としては、アンプモデルを使用しないときのEQくらいでしょうか。
Mid-Focus EQ
名前から察しできる通り、このEQではハイパスフィルターとローパスフィルターを使って中域をブーストすることができます。
デフォルトの設定ではかなり中域がブーストされているため、一見使えないEQのように感じる人も少なくないでしょう。
このEQをニュートラルにするにはこのような設定します。
hp freq 0%
lp freq 100%
両方のQ 55%
ゲイン 0%
まずこうしてから弄り始めると音作りがしやすいはずです。
このEQがPOD HDで唯一、ローパスフィルター機能が20kHZまで伸びていくので、高域をカットするには最適なエフェクトです。
Mid-Focus EQ %→HZコンバージョン
% | HZ(Freq) |
---|---|
0% | 190 |
5% | 302 |
10% | 415 |
15% | 490 |
20% | 530 |
25% | 570 |
30% | 600 |
35% | 645 |
40% | 690 |
45% | 750 |
50% | 805 |
55% | 920 |
60% | 1030 |
65% | 1140 |
70% | 1220 |
75% | 1330 |
80% | 1590 |
85% | 1860 |
90% | 2120 |
95% | 2400 |
100% | 2670 |
Q Filter
Q FilterはEQのカテゴリーには入っておらず、Filterのカテゴリーに入っています。
でも実際、機能はEQと同じです。3つの選択肢があり、ハイパスか、ローパスか、バンドパスフィルターにするかを選びます。
QパラメータとGainとMixで調整する仕組みです。