Hard Gate 対 Noise Gate

POD HDには二種類のノイズゲートがあります。Noise Gateと、もっと高度なHard Gateです。
Noise Gateの方は半分ノイズゲートで半分シグナルプロセッサーなのでほとんどの場Hard Gateを使用するべきです。
ただし、Noise Gateのほうが消費DSP少ないので、どうしてもHard Gateが使えないときはそっちを使います。

ノイズゲートの基本

ノイズゲートの役割としては、シグナルを通過させるか、完全にブロックしてゼロにするかの二択しかなく、中途半端に音量を下げるという目的では使用しません。
実際に門(ゲート)のようなものを想像するとわかりやすいと思います。

ノイズゲートの役割

門が開いているときは、そこに何も無いときと同じようにシグナルが流れなければなりません。
でも門が閉まると、シグナルは全くそこを通り抜けることができません。
その門は、流れているシグナルのボリュームレベルを探知して、設定したレベル(Threshold)よりも上回っている時のみ門を開くという仕組みです。

その”Threshold”というパラメータ加えて、ほとんどのノイズゲートにはDecayというパラメータがついています。
これは、ゲートがどれくらいの速さで閉じるかを設定するためのもので、音がゆっくりとフェードアウトするように閉じるのか、ピタっと止めるように閉じるのかを調整できます。

更に、Holdというパラメータを装備したノイズゲートもあります。
これを使えば、シグナルのボリュームがThresholdを下回っても、しばらくの間は完全にゲートを開けたままにすることができます。
ホールドで指定した時間が過ぎても、シグナルのボリュームがThresholdの値以上に戻っていない場合は、Decayで設定したスピードで音がフェードアウトしはじめます。

Threshold

Hard Gateには二つのThresholdが設けられています。OpenとCloseです。
ゲートが開いている状態であれば、ゲートはCloseのThresholdだけをみて、閉じるべきかどうかの判断をします。
逆に閉じているときは、OpenのThresholdだけをみてゲートを開けるか判断します。

この機能は実はかなり役に立ちます。
一つしかThresholdが無いノイズゲートは、ゲートが閉じる際に音が途切れ途切れになることがあります。
例えば、ジャーーーンという長くて徐々に静かになっていくような音を想像してください。
耳に聞こえる音のレベルは、
50 49 49 49 48 48 47 47 46db…
という感じで綺麗に落ちてきているかもしれません。

でもノイズゲートが探知するボリュームレベルはもっと正確なのか曖昧なのか、ちょっと違うかもしれません。
例えばこんな感じかもしれません。
50 49 48 49 49 48 47 48 46db…

もしThresholdが48.5dbに設定されていたとしたら、音のレベルがそれに達する度にゲートが閉じていまい、
「ジャーッァッァッー」というような途切れ途切れの音になってしまうのです。

そこで、OpenとCloseのThresholdがそれぞれ用意されていたら、数dbの差を開けて置くことによってノイズゲートによるレベル探知の誤差による音の途切れを解消できるのです。

Thresholdが二つあることにはもう一つ利点があります。

ギターはアタックが強い楽器です。
Open Thresholdを高く設定すると、意図的に出していないノイズ(弦に触れただけの指とか)によってゲートが開くのを防ぐことができます。
そして弦をピックでしっかり弾いたときだけゲートが開くようになります。

Thresholdが一つしかないノイズゲートで、それだけ高いThresholdに設定すると、ジャーーーンというような音をプレイしたとにに、途中でゲートが閉じてしまい、プツンと音が途切れます。でも、Thresholdが二つあれば、Close Thresholdを低く設定するよことによって、音をしっかり最後まで鳴らしてからゲートを閉じるように設定することができます。

Thresholdが一つしかないノイズゲートでも、Decayの値を使って誤魔化すことはできますが、やはり二つThresholdが二つあるものを使うのが断然良いです。
そっちのほうが、スタカット調のフレーズを弾いたときなどに自然な反応になるからです。

Hold

Hard GateにはHoldのパラメータも設けられていて、Close Thresholdの値を下回ってからゲートを開けて置く時間を設定することができます。
このパラメータは、Thresholdのところで書いたように音が途切れ途切れになるのを防ぐためにもつかえますが、それは二つのThresholdを正しく使えば必要ありません。

Holdが本当に役立つのは、Decayを長めに設定しているときです。Decayが長めに設定されている状態でスタカットのフレーズを弾くと、ゲートによる音のフェードアウトが非常に不自然に聴こえるはずです。本来そのようなフレーズでは音がパツっパツっと切れるか、一切きれないかのどちらかが良いです。

Holdを使えば、本当にゲートを閉じるべきかの判断をするための時間を設けてあげることになります。

Decay

リバーブやディレイを多用して、単音の終わりがあやふやな音を作ったときは、Decayを0から少しずらして100〜200msくらいに設定することによって、ゲートが閉じたときに不自然になるのを防ぐことができます。
タイトなリズムパートむけの音を作るときは、Decayを0にします。この場合はThresholdの設定を特に丁寧にやる必要があります。

ノイズゲートの配置

ノイズゲートをシグナルチェーンのどこに配置するべきかですが、最も効果的なのは一番頭です。ほとんどのノイズは、ギターのピックアップの悪いシグナル対ノイズ比によって発生しているためです。

コンプレッサーやディストーションエフェクトはそのノイズを増幅させているだけなので、あたかもそれらのエフェクトがノイズを出しているように感じるかもしれませんが、実際のノイズの根源はギターのピックアップなのです。ノイズゲートをディストーションなどの後に配置しても上手く設定することが難しいだけなので、一つしかノイズゲートを使用しない場合はチェーンの頭に置きましょう。

いじり方

ハードゲートを導入して調整するには、まずスタート地点としてHoldとDecayを0msにしましょう。
Thresholdは両方-70dbくらいにします。これくらいの設定であれば、簡単にゲートが開きやすく、且つ何も弾いてないときはちゃんと閉じるレベルのはずです。
ギターで何も弾いてないのにゲートが閉じないようであれば、両方のThresholdを無音になるまで上げて行きましょう。この時、ギター本体のボリュームのツマミは全開にしておくことを忘れずに。

ゲートが閉じて無音になったら、今度はちょっとしたことでゲートが開いてしまわないかを確認します。
弦を左手で軽く叩いてみたり、指で弦をこすってみたりしてください。
もしそのような些細なことでゲートが開くようであれば、Thresholdの値を上げましょう。十分なThresholdを設定できたら、今度は、ギターを弾く時に自分が使う最小の力で弦を弾いてみて、ちゃんとゲートが開くかを確認します。

これはパッチごとに加減が変わってくるはずです。例えば、ソロ用のパッチでは、滑らかなかハマリングが基準になるかもしれませんし、メシュガーのような曲のリズムパートに使うパッチであれば、それなりの力でピッキングをしてゲートが開けば十分です。

その基準となる最小の音でゲートが開かないようであれば、今度はThresholdを下げる必要があります。
意図的でない些細なノイズでゲートが誤って開く方が、鳴るべきとこでゲートが閉じたままになってプレイを妨げるよりはマシです。

次に、Close Thresholdを下げて行きます。
ここで、スタカット調のフレーズと、ジャーーーンと長く伸びる音を試します。
サタカット調のフレーズで正常にゲートが機能して欲しいですが、それと同時に長い音を途中で切ってしまうようにはしたくありません。これを両方完璧に叶えることは難しい要望です。
この中間地点を探るのですが、これもパッチによって適当な値は様々です。
ソフトなリードのパッチなら長い音符が多そうなのでClose Thresholdは低めがいいでしょう。そうすると、ギターから完全に音が出ていない状態にならないとゲートが閉じないということになりますので、スタカット調なプレイをする際はそのように意識して弾かなければなりません。
メシュガーの様な曲に使うパッチであれば、多少下手くそなミュートでもすぐにゲートが閉じるように設定をします。こういうパッチでは、そもそも単音でサスティーンの長い音は弾かないでしょうから、パワーコードが数秒間持てば大丈夫だと判断します。

個人的にHoldは0のままにすることがほとんどです。Hard Gateはとても忠実で素早いので、大きな音から突然ギターをピタッとミュートしても残響ノイズが残る心配はありません。

Decayもかなり低めに設定するので、不自然なフェードアウトするノイズもありません。もしDecayを0にしたままで特に問題がないようであればそうします。でも、ゲートが閉じる瞬間が不自然だと感じる場合は少しだけDecayを足すか、二つノイズゲートを使用します。Decayを足す場合は、ほんの20msくらいにします。これくらいであれば、変なフェードアウトノイズも聞こえずに自然なミュートができるはずです。

ノイズゲートを二つ使う

コンプレッサーやディストーションを強くかけているパッチで、思いっきりジャカジャカ弾いてる状態から瞬時に無音にできるようにするには、二つノイズゲートを使うことで対応できます。
一つ目のノイズゲートはシグナルチェーンの、ど頭に配置します。そして上に書いたように設定します。それでも、ギターをミュートした瞬間に、ブブ…っというようなちょっとしたノイズが入ってしまうような音作りをしている場合は、二つ目のノイズゲートを追加します。

二つ目は、最もノイズを増幅しているコンプレッサーかディストーションの直後に配置します。多くの人の場合はこれがシグナルチェーンの一番最後になるでしょう。このサイトで紹介している音作りの仕方を実践している人は、アンプモデルよりも前になるケースが多いと思います。

配置をしたら一つ目のノイズゲートを一旦offにして、一つ目のときと同じ手順で設定をしていきます。設定ができたら、両方のノイズゲートをonにしてみます。もし少しキツくゲートが効きすぎてるようであれば、ちょうどいいところまで一つ目のゲートを弱めていけばオッケーです。

自分で音作りをするのが面倒になったら、POD HD Manのパッチセットをお試しください。