パワーアンプのDEPは、実物のアンプで触るときと同じ感覚で操作すればいいとのことですが、まぁほとんどの人はそんなの元々いじる機会なんてないはずなので、なるべく簡単に説明したいと思います。
あ、その前にこのLine 6による公式の記事に目を通しておくことをオススメします。特に後半に掲載されている動画をを見ておくと私がこれから言葉で説明する音の変化についてもっと想像がしやすくなるはずです。笑
http://blog.line6.jp/2013/pod-hd-amplifier-extras/
パワーアンプDEPの中で恐らく一番時間をかけることになるのが、Master Volumeのベストポジション探りです。
その次がBiasです。
Sag、Hum、Bias Xは結構地味なコントロールなので、音に対して誰でもわかるほどの大きな変化を与えません。
Master
このパラメータを使って、パワーアンプによる歪みとコンプレッションの量を調整できます。
また、パワーアンプによるディストーションの色を作り出している他のDEPの設定の効力も連動して上下します。
0%やかなり低い位置に設定すれば、ほぼプリアンプだけの音色ということになります。
つまりアンプのPREモデルとFULLモデルのバランスを調整するような感覚です。
クリーン系のアンプを使っている時に不必要なパワーアンプディストーションを削りたいときは、このツマミを下げます。
ハイゲインのアンプモデルに関してはデフォルトの50%くらいが一番無難で、私の場合は弄ったとしても微調整レベルです。
Treadplateを使う場合は高くするとちょっと耳にキツイ音になってしまいますが、F-ballやUberは、高音のスムーズさが欠けることの引き換えに中域がよりイキイキとした音になります。
J-800を使う時は、パワーアンプのmasterを65%くらいまで上げてプリアンプ以上に攻撃的なディストーションをパワーアンプでかけるようにするのがオススメです。
SAG
Sagは、「ある一定量の電圧が維持されたときに発生する一瞬の電圧の低下」をコントロールします。
Sagを上げるとアタックが遅くなり、低音が肉肉しくなります。
逆に下げると、アタックがよりダイナミックになり、タイトなフィールになりますが、音色にも変化がでてきます。
私の場合はまず他のDEP設定を先に弄ってから、アタックの量を調整すするためにsagを触ります。
弄っても大体40〜60%くらいの間です。低くすると、音のエッジが効くのと引き換えに音が薄くもなってしまいます。
その場合はCab DEPのDecayを上げて音痩せを解消させることができます。
時には極太サウンドにするためにSagとDecayを両方あげることもあります。
また、使うディストーションエフェクトによってはSagを足されることがあり、そういう時は逆にDEPのSagを下げて補償します。
sagを上げすぎると、安いソリッドステートアンプのようなニセモノっぽい音になってしまい、逆に下げすぎると、パームミュートしたときに太くて気持ちいい所謂djent的な音ではなく、オーバードライブが軽くかかったクランチトーン的な物足りないものになります。
HUM
これは電流リプルの陽極電圧、つまりパワーチューブの反応をコントロールします。
アンプモデルによって、ほとんど変化がなかったり劇的な変化が起こったりで、本当にバラバラです。
更に、その「変化」というのが平行線上のものではないのです。
例えば、50%で暖かい音、25%で冷たい音になったからと言って、必ずしも0%では超冷たく、100%で超暖かいサウンドというわけではないのです。
50%以外の値にすると思いもしないような変な事が起きる可能性があるので注意が必要です。
私の経験では、Uberで70%まで上げたら、微かにデジタルな音がダブって聴こえるようになりました。私はほぼ全てのアンプで50%のままにしておくようにしていますが、このUberだけは、55〜60%にすると少しディストーションが太くなり全体的にいい感じにダークな音になるので、例外的に動かしています。
更に75%まで上げるともっと邪悪な音になってPeavey 5150に似てきます。
これはUBERのみで有効な設定であって、他のモデルでは再現性がありません。
それと、Humをあげるのであれば、Master DEPにも気を配りましょう。
この二つのバランスを取らないと、チューニングがあって無いラジオみたいに不安定な音になります。
一旦ノイズゲートをOFFにして、ギターを引いていない時のノイズの量が増えていないか確認するといいでしょう。
ノイズが大きくなっていたら、それはHumの上げすぎです。
BIAS
これはパワーチューブの偏倚のことです。
低めの設定ではクラスAB的なオペレーションになり、ヘッドルームがたくさんあるので、クリッピングが起こっても自然なクリッピングになります。
逆に高めの設定にするとクラスA的なオペレーションになり、中域とプレセンスが増して暖かくなるかわりに、ザラザラとしたようなクリッピングが起こるという特徴があります。
BiasはEQでは再現できないような絶妙な周波数反応の変化を調整できるので、0から100%まで色々試してみる価値があります。
限られたの音域のシグナル対ノイズ比率にも変化がでてきたり、ディストーションのトーンが少し変わったりもしますので試してみてください。
個人的に大体のケースで50%付近に落ち着くことが多いですが、ど真ん中ではなくほぼ毎回若干どちからに寄っています。
たまーに、Biasを100%にしてそれ以外のDEPを25%程度にしておくこともあります。
クロスオーバー歪みが発生するビンテージ系のアンプでは、Biasをあげることでクロスオーバー歪みを減らしたり完全に消したりすることができます。
が、音色に大きな変化がでてきてしまうので、それならMasterを下げてBias Xを上げる方がオススメです。
BIAS X
これは偏倚運動のことで、Biasがどれだけ設定から逸脱していけるかを調整できます。
このパラメータで最も変化がみられるのはクリーントーンです。(音量がサスティーンよりも最初のアタック音のほうが劇的に大きいため)
Bias Xを高く設定すると、コンプレッサーやリミッターのような働きをしてアタックを綺麗にしてくれます。
また、パワーアンプによるディストーションを使っているときでは、Bias Xを低くしてBiasの設定を固定するために使うと便利です。
逆にBias Xを上げてスピーカーが破裂しそうな音を演出することもできます。